フォード vs フェラーリ

2020年2月16日

トミカ、プラレール、プラモデル、ミニ四駆…小さい頃、こんなおもちゃに夢中になったものだ。ただ集めることから改造することまで、楽しみ方は色々だったし、何よりもバトルで友達に勝ったら嬉しかった。それ以外のことなんて忘れて没頭し、文字通り夢中になった。
ふと思う。別におもちゃじゃなくてもいい。心の底から好きなことに没頭したり、夢中になる時間を作ってるか?いつからか社会の殻の中に閉じこもって、小さくまとまってないか?
本作は日頃はバリバリ、あるいは楽しく働いているが、時たま虚しさにも似たこの感情を抱く大人に見てほしい。

 

 

舞台は1960年代のアメリカ。タイトルには「フォード vs フェラーリ」とあるが、話はフォード社の内部やそこに関わる男たちの人間模様をメインに描かれている。
大きな組織を動かす者、人生を技術のみに注ぎ込む者、私利私欲を満たそうとする者、そしてその全てをまとめ上げる調整役。こんな登場人物たちが出てくるわけであるが、多かれ少なかれこう言った人物はどんな組織にも居るし、仕事のジャンルは違えど誰しもが劇中に潜む”葛藤”を抱いたことがあるだろう。
ただそこに、”車”という童心を引っ張り出す要素が絡んで来るので、瞬く間に映画を見る私たちの心を鷲掴みにする。

 

 

さらにこの映画がいいなと思ったのは、”勝敗”よりも”勝つまでのプロセス”の描写に映画の多くの時間が使われていること。カーアクション!勝って爽快!という話ではなく、一つの勝利をつかむまでに、誰が、いつ、どこで、誰と、どんなことを、どうやって行ったのか、を細かく描いているのだ。
車の”ネジ一本”をどうするか、と言った話に男たちが熱く議論するシーンは今考えるだけでも胸熱だ。

 

 

おそらくあなたの仕事のほとんどは”調整役”だったり”やりたくないことをやる”ことだと思う。
だからこそ、大人になった今でも好きなことをやっているやつを見ると悔しくなるし、ふと我に帰った時「童心を忘れてしまった悲しい大人」のように自分自身のことを感じてしまうのだろう。
この映画はそんなあなたを肯定する。
たぶん好きなことだけやっている奴は、あなたが居なかったら成功しない。というか、「あいつまじで好きなことばっかやって生きててすげーよな」って奴には優秀なサポーターや調整役がついているのは間違い無いのだと思う。
深読みが過ぎるかもしれないが、そんなことを気付かせてくれたこの映画に感謝したい。いい映画です!

 

 

株式会社 Heads
杉本友太