札幌PARCO 様 のフロアマップを制作しました
/ Graphic Design
プロジェクトについて
札幌PARCO(パルコ)様で活用されるフロアマップをデザインしました。
コンセプト
今回オーダー頂いたのは、店内およびWebサイトで使う館内のフロアマップです。
B2階から、地上8階まで10フロアにまたがる施設やテナントショップの数々を「きれいにわかりやすく」かつ「スタイリッシュ」に見せたいとご依頼いただきました。
また、「シンプルの中にアバンギャルドを感じることができるデザイン」で「今までに見たことのないフロアマップの要素を入れたい」というオーダーも同時に頂きましたので、これら三つの要素を掛け合わせた、札幌パルコの顔となるような新しいフロアマップの制作が求められていました。
モノトーン
通常、プロジェクトの開始前には、クライアント様のご希望や課題をしっかりと聞き取るヒアリングの時間を設けています。今回もしっかりその時間をとった結果、事前に頂いていた「きれいにわかりやすく」かつ「スタイリッシュ」という情報は「モノトーンにまとめる」という方向性で進めることとなりました。
モノトーンという制約があるなかで、どのようにまとめるか試行錯誤を繰り返し、今回のデザインが仕上がりました。
ピクトグラム
さらに、「シンプルの中にアバンギャルドを感じることができるデザイン」で「今までに見たことのないフロアマップの要素を入れたい」というオーダーについてはヒアリングの中で「区画線やオリジナルのピクトグラムを用いて細部にこだわる」というアウトプットをすることでまとまりました。
札幌パルコのお客様は年代問わず時代やトレンドに敏感な方が多いとのことで、ある程度の長いスパンで使われる前提の普遍性を保ちながらも、トレンドに合う繊細なタッチの線とピクトグラムを用いて全体のデザインを仕上げていきました。
ディレクションあとがき
「こうしたい!」の理由を聞く
普段から制作のご依頼を聞く際に心掛けていることがいくつかあります。そのうちの1つが、「こういうデザインにしたい!」と意見があった場合には、「なぜそうしたいのか」を深掘りして聞くということです。クライアント様によっては、デザインの完成形の要望はなく、「売り上げを伸ばしたい」とか「エンゲージメント率を上げたい」といった定量的なご要望が第一に来ることも珍しくはありません。しかし、逆にデザインの完成形を第一の要望としてあげていただくことが比較的多くあります。大掛かりなアンケート調査を実施することができれば別ですが、GA4などの計測ツールの数字では表すことのできない「ブランド力の強化」だったり、「イメージアップ」を目的としていることが、その理由に当たると考えています。
今回のヒアリングの際にいただいた「モノトーンでシンプル、かつスタイリッシュなデザインにしたい」というご要望も前述の通り、定量的なご要望ではなく、デザインの完成形を特定の形で望まれていました。もちろん十分なヒントではありますが、我々はこのヒントだけでは創り出すことができません。なぜなら、そのデザインにする根拠が不明瞭だからです。なぜシンプルがいいのか?なぜモノトーンなのか?スタイリッシュとはモード系なのか?それとも北欧家具のようなスタイリッシュさなのか?そしてなぜスタイリッシュである必要性があるのか?など、デザインの根拠となる要素を埋めていくために、ヒアリングというコミュニケーションを通してお互いの認識をすり合わせていきます。普段来館されているお客様の年齢層、男女比、周辺に新しくできた駅直通のモール、またこれから入るテナントの情報など、多岐に渡る情報をヒアリングし、パズルのように組み合わせて「モノトーンでシンプル、かつスタイリッシュでなければならない理由」を言語化していくのです。
もちろん、この言語化の作業がなくても「モノトーンでシンプル、かつスタイリッシュ」なデザインは創ることができると思います。しかし、そこに明確な根拠と理由があり、モノトーンであるべきか、シンプルであるべきかの議論を通って創り出されたデザインとは、重みに差が出てくるのではないかと考えています。
デザインあとがき
「札幌PARCOらしさ(独自性)」
「今まで見たことないな」
「シンプルな中にアバンギャルド」
というお題を頂いてのフロアマップの制作でした。
もちろんPARCOに来ていただいたお客様が迷うことなく情報を得ることができ、見やすいように仕上げるといったことも加味しなければいけません。
「札幌PARCOらしさ(独自性)」
ヒアリングの際に札幌PARCOの歴史をお聞きしたり(日本で3番目のPARCOみたいです)、全国にあるPARCOのフロアマップを調べるところからはじめました。札幌PARCO(PARCO自体そうですが)はファッションの発信地ということで、シンプルだけどファッショナブルで新しい、そしてキレイに仕上げていく方向性を何案か作り固めていきました。
制作の際に札幌PARCOの持つ「地元に根づいた施設」らしさを出すためにとっつきにくいようなデザインにならないように気を使いました。ここを加味しながら今回のフロアマップのデザインルールをしっかりと作り、それをもとに仕上げていきました。なのでどの階を見ても、どの場所をみても全て統一されていてキレイに仕上がっています。見る人にはなかなか伝わりにくい細かいところですが、こういう細かなところをしっかりとしてあげないとノイズになり、見る際に「なんか見にくいなぁ」という結果になると思っているので気を抜かずに作っています。
またモノクロで仕上げる際、「札幌」という北国らしさを出すために全体のトーンが強くなりすぎず、シンシンとした雪の雰囲気を感じれるようにしました。薄くドットの模様が入っているのもそのためです。
「今まで見たことないな」「シンプルな中にアバンギャルド」
この2つのお題は同時に解決しました。
フロアマップは区画ごとに区切られる際に線同士がくっついているのですが、接することなく区切りました。これによって圧迫感がなくなり見る人へ負担をかけることなく情報を伝えることができる仕上がりになっています。
最近ではシンプルにしすぎてわからないというものをチラホラ見かけます。確かにキレイでさっぱりしているのですがどうしても情報が伝わりにくいと感じます。このフロアマップでは階段やエスカレーターの乗る方向なども正確に示し、迷うことがないように仕上げています。
シンプルにしつつも、残すものは残し、しっかりと精査し削れるところまで削って仕上げるということが重要だと感じています。
「アバンギャルド」というお題は少し悩みました。
手っ取り早く「変なことをする」「奇抜なことをする」でアバンギャルドにはなります。ただそれだけではアバンギャルドにしただけで、本質からアバンギャルドにはなっていません。
アバンギャルドはWikipediaでは
フランス語でもともと「前衛部隊」を指す語であり「最先端に立つ人」、芸術の文脈においては、《革新的な試み》や《実験的な試み》を指すようになった。
ということでした。「変なことをする」「奇抜なことをする」では解決になりません。新しくて見たことのないものを仕上げなくてはいけません。また担当者様の中にある「アバンギャルド=新しいもの」とは何なのかを掘り下げて掘り下げて、さらに掘り下げてお話を聞いてそこから得られたことをアイデアに生かしました。(ヒアリングのことについては飯塚のあとがきをお読みください)
「こうしたい」というお題を鵜呑みにするのではなく、その本質を捉えるのが大切です。「線の圧迫をなくす」「ドット模様を遊び心でいれる」「ルールをしっかり設定し仕上げる」がアバンギャルドなフロアマップのいい要素になりました。
オリジナルのピクトグラムを制作したのもアバンギャルドのひとつかもしれません。東京オリンピックでも話題になった「ピクトグラム」です。
素材をダウンロードすることなく、フロアマップを制作したデザインルールに従って一つ一つ作りました。なのでフロアマップの中においても違和感がなく見ることができます。
東京と札幌という遠い距離でしたが、何度もこまめにコミュニケーションを取り、担当者様と一緒にいいフロアマップを作ることができとても楽しかったです。